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錠の壊れた屋上の扉を開いて、一番最初に目に付いたのは
蒼く晴れ渡った空だった。雲一つ無い蒼空。
雨の多いこんな真夏に、ここまで蒼く透き通った空を拝めることはそう無いだろう。
こんなに蒼いなんて、皮肉としか思えない。つくづく神様は俺のことが嫌いらしい。
それとも俺がこれからすることを引き留めようとでもしているのだろうか?
それはそれでとても皮肉だ。

「ま、神様なんて等の昔に信じてないけどな・・・」

そんな皮肉を漏らす。この台詞を言うのも何回目か。
俺は扉を閉じて、まっすぐに屋上の手すりに向かう。
下の景色を眺めると、見慣れた校庭が広がっている。
その先には俺たちの住む町。普段はすっかり忘れがちだが
この学校は丘の上に出来てるので、見晴らしも最上だ。
町のあちこちに見える木々の新緑がまた鮮やかに太陽の光を反射している。

誰もが言うであろう。ここは綺麗だと。

これまた皮肉。晴れ渡った空に生まれ育った町を一望。
ここは綺麗すぎる。こんなに美しい町並みを拝めるのも滅多にない。
あんまり綺麗すぎて泣きたくなってくる。なんでここはこんなにも美しいのか。


何故自分は死にたいと願っている?


死にたい。もうこんな世界は嫌だ。生きていても仕方がない。
自分が考えていることが分からない。
何故死にたくなったのかも、嫌になったのかも、忘れてしまいたい。
誰が悪いのか。自分が悪いのか。
もう何もかもぐしゃぐしゃで分からない。
ただ、死にたいと。自分がいなくなってしまえばいいと。
そればかりしか考えられなくなった。

(どんなに美しくても、俺にはなんの足しにもならねぇよ。)

手すりに足をかけて飛び乗る。手すりの上に立ち、仁王立ちでバランスを取る。
4階建ての校舎の屋上から見る高さはそれだけでも高いのに、
手すりの上に立ったせいでさらに高い。
風が少しでも吹けばぐらりと身体が揺れる。大きな風が吹けば一溜まりもないだろう。
それでも、それに恐怖を感じることなく俺はそこに立っていた。
そこから一望する景色に溶け込んでいけそうな気がする。
そんな幻想を抱きながら、俺はその場から消えようと力を抜いた。
さよならこんな世界。もう2度と来ねぇよ。


「A fool! Stop! !」


後ろから馬鹿でかい声が聞こえた。あんなに大きな声で後ろから急に叫ばれたのに
不思議と驚きもせず、バランスも崩すことも無かった。
聞き慣れない発音の言葉。日本語じゃない。そう。確か今まで頭を抱えて勉強していた外国語。
手すりから降りることなく後ろを振り向くと、そこには俺の学校の体育着を着た金髪の女子がいた。

「・・・・・・へ?」

あっけに取られた。だって金髪だ。
こんな日本のど田舎の中学に金髪の女の子。ましてやこの状況。
こんなクソ暑い真夏の屋上にわざわざ来るなんてやつもそういない。
日本では一般的の黒髪の生徒ならともかく、どっからどう見ても他国から来た外人さん。
しかも学校の体育着を着ている。どういうことだ?と問わずにはいられない。
そんな事を考えている内に金髪の女の子はすごい形相で俺に近づいてくる。

「Well........と、とまれぇ!バカ!!!!!」

無理矢理俺の手を掴むと彼女は俺を勢いよく手すりの上から下ろした。
不意をつかれた俺は、バランスを崩し受け身も出来ずに床に身体を叩きつけられた。

「死にッてーのかぁ!!バカ!アホ!間抜け!」

女とは思えないほどの罵倒。
下手くそな日本語。しかし「バカ」「アホ」「間抜け」の所だけ正しい発音になっていた。
それが落ちたときの衝撃と手足に出来た擦り傷の痛みにを忘れるくらいムカッっとした。

「うっせー!!だまれ!!クソ女!邪魔すんな!」
「テメーが黙れ!!!馬鹿にすんな!クソガキ!!」
「おめーにどうこう言われる筋合いはねぇ!!!」
「日本語なんて分かるか!!!!There is not a meaning even if you die!!!!クソが!!」
「ハァア?!!意味わかんねぇ言葉にしかきこえねぇよ!くそが!!」
「てめぇがクソだ!!!!」

やたらむかつく金髪の女子は、日本語をそんなに理解していないらしい。
しかし、罵倒する言葉に限り理解し、話せるらしい。
時々英語を話しているようだが、英語が得意でもない中2の俺にはそれが理解できない。
不毛の罵倒の会話を俺たちは続けていた。

「・・・もういい!」

この状況にもいい加減飽き始めた俺は、再び手すりに向かい、手すりに手をかけた。
すると、金髪がまた俺の手を強く引っ張った。

「お前に関係無いだろ!俺に関わるな!」
「やめろ!死ぬな!」
「うるさい!だまれ!」

腕を振りほどこうとする。でも以外とこの金髪は力があって振りほどけない。
しかたなく、金髪の体を突き飛ばすように振りほどく。
今度は効いたらしく、俺の腕から金髪の手が放れた。

「待てよ!クソ野郎!!!」
「うるさっ・・・・」
「お前が好きだ!!!」
「・・・・・・へっ?」

突然の言葉に驚いた俺は、その一瞬の隙を突かれた。
一瞬で体は宙に浮き、地面に叩き突かれる。
いわゆる背負い投げ。この女は言葉で隙を作り、俺に背負い投げをかけた。
そして地面に叩きつけられた俺はそのまま羽交い締めをかけられた。
抵抗するも上手い具合に力が入らない。

「いだだだだだだだ!!!!離せ!!!馬鹿!!痛っ!!!!」
「あんたがアタシのことどう思っていても、なんだっていい!
何度だっていってやる!!好きだ!好きだ!好きだ!!!」
「痛いって!!てか、意味わかんねぇ!!なんだって・・・っ」
「アタシはあんたが好きだ!」

羽交い締めをかけた状態で、俺を好きだという金髪の名前も知らない女の顔を見た。
目が涙で溢れていた。とても悲しげな顔。
本気で俺を心配している。こっちが悲しくなってくる。
それを見て俺は抵抗していた力を緩めた。そして
金髪も羽交い締めを止めた。

「・・・。なんなんだよ・・・お前・・・。」
「死ぬな・・・ばか。」
「・・・・。」

なんだか何も言えなくなってしまった。
なんでこいつがこんな事を言うのかも分からない。
俺の知らないところでこいつは俺を恋いこがれていたのだろうか?
それなら納得がいく気もする。こんな俺でも好いてくれる子がいたのか・・・。
こんな駄目野郎好きになってもしょうがねぇぞ。他の男にしとけ。

「・・・。なぁお前、名前は?」
「?」
「名前!・・・えっと・・・・What you are name?(あなたの名前は?)」
「・・・アキセツ。秋雪優輝」
「へー。名前は日本人なんだな。ハーフか。・・・なぁ、お前なんで俺好きなの?」
「・・・・????」
「えっと・・・英語・・・英語・・・・・。Why do you love me?(何で私が好きなんですか)」
「・・・?What?(は?) I don't love you....(私はあなたのこと好きではないですよ)」
「・・・・は?」
「?What?」
「・・・・」
「・・・・?」

もうわけわからん。意味わからん。
なんなのこいつ?好きだ好きだと言ったくせに、好きじゃないってどいうことだ?!
なんとも言えない微妙な空気が流れる中、屋上の扉がギギギっと音を立てて開いた。

「おーい。ユウキ!弁当持ってきたぞ!って・・・あれ?」

扉を開けたのは、俺の知らない男子生徒。上履きの色からして上級生だ。

「めずらしいな。俺たち以外にこの屋上に人がいるなんて。物好きだな~こんな真夏のお昼時に。」
「えっと・・・いや・・・」
「ソラ兄!!遅かったな!」

金髪の女が日本語で口を開いた。

「お腹空いた!特性弁当!」
「はいよ。そっちの日陰になってる方で食べるぞ。ついでだからそっちのお前も食べるか?」
「へ?俺?」
「いっぱい作ってきてあるから、良かったら一緒に食おうぜ。
俺の手作りで悪いけど、結構上手いんだぜ俺。」
「いや、でも・・・」
「遠慮すんな。ソラ兄の弁当美味いよ!」

ソラ兄と呼ばれたそいつが日陰で弁当を広げ始め、それに金髪女もついていった。
そして俺は金髪女に手を引かれて、そのあとについていく。
気がつけばすっかりこの二人のペースに俺ははまっていった。
お弁当はとても旨そう。中学生男子の手作りとは思えないほどの出来映え。
色とりどりに彩られ、花形に切られたニンジンなんかもあったりして、とても手が込んでる。

「「いただきます!」」

俺を巻き込んだ二人は手を合わせてからお弁当を食べ始めた。
俺の手にも箸を持たせて、俺も食事に参加。
俺はただただ、ころころと変わっていくこの状況に流されていった。
お弁当は見た目通り美味しかった。本当に美味しかった。
お弁当ってこんなに美味しかったか?

「空が蒼くて本当に綺麗だなぁ・・・。」

お弁当の持ち主がぽつりと呟く。
改めて見上げた空は、先ほどと変わらず蒼く晴れ渡った空。雲一つ無い蒼空。
雨の多いこんな真夏に、ここまで蒼く透き通った空を拝めることはそう無い。
本当に綺麗だ。皮肉なほど。この弁当も皮肉なほど美味い。
金髪女は俺を好きだと言った。なんなんだよ。もうわけわかんねえよ。
なんで今更こんな皮肉じみたことを神様はするんだよ。
気がついたら、涙があふれ出してた。
それを俺は二人に気づかれないように、下を向きながらがつがつ飯を食った。
お弁当は本当に美味しかった。


飯を食い終わって、訳のわからん二人組はクラスに戻っていった。
まるでさっきまでのことは嘘のように屋上はシンとしていた。
一人、屋上から景色を眺める。
世界は相変わらず綺麗だ。皮肉なほど。
そして俺は、死ぬことが急に馬鹿らしく思えていた。




「そういえば、あの金髪やけに可愛い顔してたな・・・」



Fin。


3-4組のクラスに向かう途中。
ソラはふとあることに気づいた。

「ところで、ユウキ。今日一緒に屋上にいたあいつ、誰だったんだ?」
「うあ?知らないよ。」
「知らないって・・・。おい。」
「アタシが屋上に来たときには、自殺しそうになってたけど、
気合いで止めた。昨日たまたま見てたアニメの言葉とか適当にチョイスして
日本語で止めてみた。」
「・・・・はぁ?!」
「はぁ?!って、ソラ兄だって、他人に弁当分けてあげたじゃん」
「いや、それはだって今日、いろは姉さんが弁当持っていくの忘れたから、
一つたまたま弁当が余分にあったし、せっかくだからと思って・・・・・。
ってそんなことより、自殺って?!!」



夏休みが近づく7月某日。
中学2年の少年と中3の双子の出会いの物語。




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